親の心 子知らず ツバメの場合
40年前のことだけど、仕事帰りに「鳥の巣」という名の飲み屋によく通っていた。野鳥趣味では、鳥の巣に近づくと鳥が警戒してストレスになると、日本野鳥の会の人から聞いていたので、私の掟として巣には近づかないことにしている。そのため、親が子に給餌する姿を撮る機会がほとんどなかった。
だからといって、いつも親が餌を与えるわけではなく、自分で獲りなさいと言わんばかりに、近くを通りすぎるだけのことも多い。早く巣立って欲しいということだと思うけど、子の餌のねだり方が凄まじい。親の心子知らずとはいうが、巣の中から生存競争している野鳥ならではの姿かもしれない。
ちなみに、鳥の巣という飲み屋はまだ健在のようだ。久しぶりにこっちの巣には行ってみるかな。
大きな口をあけて凄まじいねだり方だ。
若いツバメが登場!
こんなタイトルだと野鳥じゃない世界では誤解されてしまいそうだ。ネットの辞書によると、若いツバメとは、「年上の女性の愛人になっている若い男。語源は奥村博史(1889-1964)が平塚らいてう(1886-1971)に送った手紙の中で、年下の自分自身を『若い燕』と書いたところから、こう呼ばれるようになった」ということだそうだ。
平塚らいてう(雷鳥)といえば、大正から昭和にかけて女性の地位向上に尽力した人として知られている。国会議員だった市川房枝とは同世代の知己の仲だ。昨今、国や地方の議員や会社の管理職の割合などで女性の地位をとらえるのも何か変だと思うが、世界の状況と比較するにはとても分かりやすい指標かもしれない。事実、行政に関する国際会議をやると、海外の公務員や団体の大事な役割をたくさんの女性が担っているのが分かる。もちろん、その仕事ぶりを知るたびに、たんに女性の割合が高いというだけではないことも分かる。
ところで、雷鳥というのは平塚のペンネームだけど、奥村が平塚のもとを去ったときに「燕」と書いたのは、奥村も平塚も野鳥に興味があったことを思わせる。実際、奥村も平塚も「野鳥」という名を造った中西悟堂(1895-1984)と知り合いだったという。金沢市の兼六園の隣にある広坂公園に中西悟堂の読んだ歌の碑がある。
「るりびたき鳴くはいまつのかさなりの しげみもくらし日もさし入らず」