備前焼の古里を歩いてみた
岡山駅から赤穂線の電車に揺られて40分、伊部駅に降り立つと赤いレンガの煙突がみえる。陶器窯の煙突だ。ここは備前焼の古里である。伊部駅から一歩踏み出すと、備前焼のギャラリーや窯が立ち並ぶ。駅からすぐのところに江戸時代から昭和46年まで使われていた天保窯がある。天保窯のあるに小山に登ると伊部の街が見渡せ、方々に煙突が立ち並んでいるのが見える。そして何となく煙の臭いがする。
奈緒主演の2019年の映画「ハルカの陶」を観てから行ってみたくなった場所だ。金曜日の午後だからか、人通りはまったくと言っていいほどない。備前焼のギャラリーに併設しているカフェに入ると、地元の人たちがケーキセットを食べながらおしゃべりしていた。財産がありすぎて、茶室のある家をどうやってリフォームしようか相談していた。羨ましい話だ。
たった半日で「ハルカの陶」の生活を垣間見ようなんてできないのは分かっていたけど、まずは気に入ったお皿を探し求め、そしてお決まりの映画ロケ地巡りとなった。不死川の河原に小さな遊歩道が整備されていて、紅葉したツタが青空に映えて美しかった。ロケ地のビューポイントと紹介されている通り、なかなかの素敵な場所だった。
街を歩くと、家の外から見る限り人々の生活臭をまったく感じない。きっと家の外と内が別空間になっているのかもしれない。古い地方の街に行くと、日本家屋の木の壁が生活臭を浄化している印象を受ける。ただ、備前焼の古里の生活は陶器作りだ。「ハルカの陶」にあるように、生活自体がすでに浄化されていて、外と内が陶器によってうまくつながっている街だと思う。
「ハルカの陶」のポスター
天保窯から眺めると何本かの煙突が見える。もう少し登ると街を見渡せる。
10日~14日も窯を燃やし続けるにはたくさんの薪が必要だ
不死川の遊歩道
狛犬はもちろん陶器だ
伊部駅