カワセミのソーシャルディスタンス(社会距離)
ソーシャルディスタンス(Social Distance、社会距離)という言葉を聞かない日はない。
人と人の社会距離に関する研究は、アメリカの文化人類学者であるエドワード・ホール氏が1966年に出版した「隠れた次元」という本で紹介した概念である。この本の中ではライオンと調教師との距離から話が始まる。その距離が遠いとライオンは逃げていくが、近いと襲われる。調教するのにちょうど良い距離があるというのだ。人と人の間の距離にも、家族や恋人という間柄、会議や講演といった状況によって快適な距離があるという。距離には、例えば恋人同士の密接距離(~45㎝)、家族が食事する個体距離(~120㎝)、仕事で会話する社会距離(120㎝~200㎝)、知らない人たちとの公共距離(360㎝~)の4つの距離がある。ここから社会距離(Social Distance)が来ている。人と人の会話ができる距離ではあるが、その中の最も遠いのが180~200㎝ということだ。
カワセミ同士も、給餌と交尾は個体距離と密接距離に違いないが、カワセミ同士が会話する距離はどうだろう。カワセミの鳴き声はかなり遠くでも聞こえるので、社会距離にはかなり幅がありそうだ。とはいえ、最も近いときでは、カワセミが羽根を伸ばした距離を保っている。ソーシャルディスタンスは人が腕を伸ばした距離ということなので、最小と最大の違いはあるが、よく似ている。