カワセミのホバリングで考える飛行機と野鳥の進化
久しぶりにカワセミのホバリングを撮影した。近所の池のカワセミはダイレクトに池に飛び込むことが多くて、なかなかホバリングをしてくれないこともあり、1枚でもホバリングを撮れると嬉しくなる。
このホバリングで思い出すのが、ヘリコプターではなくて、漫画の攻殻機動隊に登場する輸送機である。いわゆるティルトローターと呼ばれ、飛行機のプロペラが前方向になって飛んだり、プロペラが上方向に向いてその場で浮いたりすることのできる飛行機だ。ティルトローターのプロペラの傾け方に比べると、カワセミの翼の動きは芸術的ともいえる。翼を微妙に傾けながら羽ばたくだけで、高速に飛んだり、池に飛び込んだり、ときにホバリングしたり、池から魚を咥えて飛び出したりできる。
鳥を見ながら飛ぶことを夢見た人類は飛行機を発明したけど、鳥の動きにはまだまだ追いついていない。機械には真似できない生物の進化といえる。今話題のオスプレイはその機械の中でもまだまだ進化が足りないのだろう。もっともオスプレイ(英語でosprey)はミサゴを意味するので、鳥というよりも猛禽の意味に近いのかもしれないな。
いざ降下して
まっしぐらに池にダイビングする。
枝につかまるときは、翼で上手にブレーキをかけ、
バランスをとりながら着枝する。さすがにまだ機械では難しい。
tag : 野鳥, 横浜, カワセミ, 池, ホバリング, ティルトローター, オスプレイ, 進化, 飛行機, 攻殻機動隊,
大きな魚に奮闘するカワセミ
近所の池にはオスとメスの2羽のカワセミがいるのだけど、池にちょうどいい具合の魚がいないらしい。魚獲りで待機する時間が増えたし、飛び込んでも失敗する確率も増えた。午前の2時間と午後の2時間をカワセミ撮影に費やしたけど、午後3時過ぎまでずっと待機と失敗の連続だった。
そして、最後の最後にようやく大きな魚を捕まえた。それがわりと大きな魚で、尾ひれの付け根を口ばしで咥えているだけだった。普通だと捕まえてからすぐに飛び去ってしまうのだけど、飛び上がって水面から10cmくらいのところで、魚がもがいていてバランスを崩され、態勢を整えるのに苦労しているように見えた。
ようやく捕らえた大きな魚だし、放してなるものかと一所懸命のカワセミの気持ちが伝わってきた。
写真は魚を捕まえて水面に飛び出してきてから、0.5秒くらいの連続写真。
水面から飛び出してきて、
飛び立とうとするが
魚がもがいていて、バランスをとりにくく、
なかなか飛び去る態勢にならない。
飛び去ろうとすると魚が暴れだし、
もう一度態勢を整えている。
魚の目もくっきり!カワセミ撮影は鳥認識×連写技術で大きく進歩!
カワセミの魚獲りに魅了されて野鳥撮影にはまってしまった人は多いと思う。私もその一人だ。連写できるカメラに超望遠レンズを装着し、さらにファインダーの上に照準器をつけ、カワセミが飛び込みそうな場所に照準を合わせてじっと待つ。飛び込んだ場所に照準を移動しながら、カワセミが水しぶきをあげた瞬間にシャッターを押し始める。カワセミの目にピタッとピントがあった写真が撮れれば成功だ。ただ、照準を外したり、ピントが合わなかったりすることも多い。天候や時間など、飛び込んだ場所の光の具合にも大きく左右される。
よく「カワセミが飛び込む写真を何百枚も撮って、何が楽しいの?」とよく言われる。でも、これが楽しいのである。撮るのが難しいから挑戦し甲斐があることは事実だけど、何年たっても必ずうまく撮れるわけではなく、失敗することも多いため、何年たっても上手に撮れるととても嬉しいからだ。
私は半世紀くらい前にペンタックスのフィルムカメラから写真を始めたのであるが、ミラーレスカメラになってからの技術の進展は著しく、この数年で鳥認識オートフォーカスという凄い機能がついた。カワセミの飛び込む場所に照準をオートで移動させることはできないけど(いつかできるかも)、ファインダーの中に入りさせすれば、カワセミの目にピタッとピントが合う確率が増えた。解像度もあがって魚の目もくっきりと写るようになった。それに連写速度が数10枚/秒なので、カワセミが水に飛び込んで魚を捕まえ、もう一度潜ってから勢いをつけて飛び上がる短い間に数枚の写真を撮ることもできるようになった。
そのため、水面ギリギリの迫力あるピントの合った写真を高確率で撮れるようになったのである。カメラ会社さんのあくなき新技術への挑戦に大感謝!である。とはいえ、あまりにも機械に頼っていると、挑戦するという気持ちが薄らいでくるのがちょっと心配であるが・・・まあ、それでも人間はよく失敗するので大丈夫!?
カワセミだけでなく、魚の目もくっきりと写る。写真データは、f/6.3、1/2000秒、ISO-1250。
水面で踊っているようなカワセミと魚。写真データは、f/5.6、1/3200秒、ISO-500。
魚の尾をちょっとだけ咥えたカワセミ。これも魚の目がくっきり。
魚を咥えて飛び出してきた、オーソドックスな魚獲りの写真。
飛び出しながら方向転換しようとしている。
カワセミのオスとメスが接近したとはいえ、まだまだソーシャルディスタンスだ!?
横浜は朝からどんよりとした曇り日。昼過ぎからときどき陽がさすが、あまり暖かく感じられない寒い日曜日だった。池のカワセミはあいかわらずのまったりだったけど、オスとメスが30cmくらいまで接近することがあった。
文化人類学者のエドワード・T・ホールが1966年に出版した「かくれた次元(The Hidden Dimension)」で、人と人の間の新しい距離の概念を提唱した。恋人たちの密接距離(~45cm)、家族が食事する個体距離(~120cm)、仕事で会話する社会距離(120cm~200cm)、知らない人たちとの公共距離(360cm~)の4つの距離があるという。
カワセミ同士の30cmの距離は、人間でいえばどのくらいなのだろう。例えば、カワセミの全長は平均17cm、人間の身長は平均165cmということなので、人間の感じる距離はカワセミの10倍くらいになるだろう。そうするとカワセミの30cmというのは人間の3mだ。ということは社会距離と公共距離の間だ。社会距離とはソーシャルディスタンスで、コロナのときの耳タコだった。だからカワセミにしてみれば、まだまだ急接近とは言い難い。恋人の5cm以下のなるまで、あと2~3ヵ月はかかるだろう・・・
オスの水浴び。
石のそばだったけど、ピントをとられなくてよかった。
いざ魚獲り!
たまには原点に戻ってカワセミ礼讃!しよう
近所の市民の森には、ルリビタキやジョウビタキのオスやメスをはじめ、アオジ、アカハラ、ウソ、カワラヒワ、シロハラ、ツグミ、トラツグミなど、たくさんの冬鳥であふれている。満開の梅にはメジロが来るし、朝起きて天気予報を見ながらどこに行こうか迷ってしまう。そのため、池のカワセミにご無沙汰になり「カワセミ礼讃」のタイトルが少々かすんでしまった。
とはいえ、池のメスとオスのカワセミはあまり活発ではなく、枝にとまってまったりしている時間が長い。数時間いても、2羽で数回くらいしか魚獲りをしてくれない。それでだんだん遠のいてしまったのであるが、そろそろ原点に戻ってカワセミ礼讃!しようと思う・・・けど、しばらくは目移りしそうだな。
まったりしているオス。
大きな口をあけて、暇そうなメス。
たまに、メスが魚を獲る。夕陽に輝いて眩しい。